鳶飛魚躍

真夜中の病棟に船が軋む衣擦れの音
苦しく思い悩む夜だった。
凪いだ海はいつの間にか湿気を携えて時化る。
人は皆、一人孤独に船を泳がせているだけで
私が漕ぎ出した船はひどく弱弱しく不安定なだけ。
オリーブの枝を咥えて飛んでいく文鳥
壊れた船の接木を握り締めたまま溺れる子供たち
「ぼくらの魂が船を漕ぎ出すとき」
私の船がもう少し強くなりますように。
あの人のように力強く生きていけますように。