山百合のオレンジ

サーバーの熱と近くの沢庵の臭いと、メールと、壊れた他人の心の悲鳴と、全部聞いていたら、新宿のブザー音が頭に鳴り響いて、目眩で死んでた。


休みたいなら休めばいいじゃない、行きたいってうだうだ言うだけで何もしないのってかっこわるいよって、誰かも同じこと言ってたね。kyだ。
そうだね、ごめんなさい、もう何も言わないようにする。ごめんね。
頑張りますっていう度に梯子上ってるよねって、胸に突き刺さって、
悲しくなって、凹んで、泣いて、今週は生きる力も多分弱まってる。
毎日ビクビクする心を必死に抑えて生きてると
ふっと気を抜いたら、そのまま地面に落っこちそうだった。
潜れども潜れども光はない。
やっと繋がったkyも、仕事のことで精一杯で、苦しそうなkyの声を聞き、彼をなだめ、携帯を閉じる。


透き通る光を受けてキラキラ光る飛び魚たちの飛翔する胴体、跳ねる音、普賢岳の隆起した岩、海の匂い、草の匂い、山百合のオレンジ、外海の夕焼け、力強い風の音。


泣きたいね、海にかえりたいね。辛いよって、泣きたいね
ただゆっくり、心を休める場所が欲しいだけで、他には特に何もいらなくて
足にびっしりと絡み付いた針金が、足元から全身を覆っている。意識の底で気持ちを失ってる。
どこに行けば、この針金を外すことが出来るんだろう。


どこかで心を休めたい。大好きな言葉の中で、ずっと眠っていたい。