谷間の乾いた水車小屋

ギータでカレーを食べていたら水色のパーカーを着た青年が入ってきた。入り口近くの一人席は真上にスピーカーがあって音がちょっとうるさい。彼は卵形のヘッドフォン(これも水色!)を取り出しiPhoneをいじり始める。真後ろでカランと音がして、また同じくらいの青年がふらっとやってくる。およー、昨日スタバに居たお兄さんにソックリじゃん。そんなことを考えつつ、私はナンをちぎって隣のグループの会話を聞いている。宗教団体の打ち上げ昼食っぽい。ガコガコ雑音を噴出すようにインド音楽、飛び交う真隣の聞き慣れない仏教用語(っぽいの)、目線にどうしても入ってしまう水色パーカーのアシンメトリーな頭、緑色の海にズブズブと沈んでいくゆで卵の黄身、今日この後部屋に戻ったらやらないといけないこと、ウィルキンソンのトニックの滲み、見上げた笑顔、西日暮里の隣駅の名前、自動ドアを入った右側に乾いた水車小屋、思い出さないようにと耳にこびりついて離れない文章。ラガブーリンが宙を舞う。ねえ、私生活は乱れていませんか?