「音符一つ一つに、アルコール、リキュール、香料などを対応させてある。ペダルの強音は掻き立て卵に、弱音ペダルは氷に通じている。炭酸水は、高音域での顫音だ。分量は、持続の長さに比例してるんだ。つまり、八分音符の四倍が一単位の十六分の一にあたり、四分音符は一単位、全音符は四単位というわけだ。ゆっくりした曲を弾くときは、調節装置が働いて量がふえないようになる――そうでないとカクテルが溢れ返るんだ――それにアルコールの含有量もだ。曲の長さに応じて、単価を変えることもできる、たとえば百分の一に縮小するなどしてだ。そうすれば、側面を調整する方法であらゆる和音を考慮した飲み物がつくれるんだ」
「日々の泡」
ボリス・ヴィアン・曽根元吉訳 引用