明るいペーヴメント

以下、抜粋




激しく空間を彎曲させたシュプレヒコールは オフィスの若いおんなたちの笑いやささめきの凍結のなかに 憎悪が愛していない愛に変質すると 突然 裂けた空から 小鳥たちが青い血を吐いて落ちてくる すべての明示の朝は 嬰児の幻想の国の音楽と色彩に病んでいる すでにこの痛ましい明るさのなかでは おとこやおんなたちは血のない植物だ きみに無数の倒れた死者の血が視えるか 弔詞が弔詞をかき消し悪罵が悪罵をかき消し 植物の液汁のような生が死者の血を流してしまったから この明るいペーヴメントの上には 一羽の小鳥の影さえ視えない



『或る朝』北川透
抜粋