マボロシの世界

引っ張って伸ばして縮めて放たれて
時が歪む街に踏み入れた足が二つ
いつか見た小説のようにバスが来て
帰り際の汽笛が鳴るその瞬間までが本当の話
揚げピータンに乗って兎が空を飛び始め
夜更けの消波ブロックにロウソクを打ち捨てて
体ごと映画のように海になる
手離した一瞬から色褪せ始める
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