アニス香の月


大学生みたいな1日だった。
朝っぱらから一人泣いてシーツを濡らして
三丁目のカフェテラスで友人達と談笑して
八角形の月下に夜間講義は第三会議室
恋文のようにブヤブヤと自転車で帰宅。
眠れないまま朝、爛々と頭はそのままに背景色だけが変わった。


昔一緒にいた人たちが、今は今の形で活躍していて
相変らず何も出来ずにいる私はiPhoneで眺めながら
一人黙って座り込んでいる感じがしている。
真っ暗な排水溝は淀んだ水で満たされていて
エラ呼吸が出来る浦島太郎がフラフラ泳いでいる。
この長いトンネルは、まだ出口が見える気配さえない。


テトラポットが転がる西新宿の光の海をサイクリング
あの街のように日付をループさせてしまった心の緩み
どうすればシンプルになるだろう、出口は近付くのだろう。
「そんな見えない出口を追いかけるのはやめて
あなたのセカンドライフを楽しみましょう!」と
泥水の中のデバイスが腕になって手招きしてる。


5年後の真っ白なフキダシを想像していたら
私の真後ろにいたバカボンのパパが何やら喋っていて
指差す方に、高速バスに向かって長蛇の列を作っている人々が見えた。
赤いバスには「富士の樹海」というプレートが貼られている。
人々は皆軽装で、国会図書館の透明ビニール袋に荷物を入れている。
自転車で通り過ぎながら私は、何故彼らがそこに並ぶのかを考えていた。
幾通りの人々をパターン化して観察して
考えていたら目が覚めてしまった。そんな夢をみた。