shoot the fireworks

金曜日夜、会社の皆は早々に帰ってしまった。
別部署二人の雑談と苛突いた声が空気に響いて非常階段に駆け込む。
さっきから止まない突然の雷鳴は、神宮の花火だった。


私は目が悪いので、一つの光が10個くらいに見える。
最初は2・3個だったものが、近年は明らかに10を超えている。
そんな目で花火を見たのは久し振り。
遠くマンションの隙間から放たれる花火の光ひとつひとつが
それぞれ10倍になって瞬いている空は言葉にできない美しさだった。


一番好きな花火は、「長崎の稲佐山から見る花火」。
夜景をバックに上から花火を眺める。
丸々とした花火、ばらばらの方向に飛んでいく花火
花火の立体が長崎港の水面に反射してもう一つ輝く。
帆船まつりで集まった幾数の船がそれぞれに光を放っている。
人々の日常を照らす暖かな光はいつもと同じように夜景に埋め込まれている。
あの美しさを超える花火はまだ見たことがない。
右に貼ったのはどこかの拾い物の写真だけど、こんなレベルじゃない。
夜景がもっともっともっと広がっていて、圧倒的な美しさなんだ。
この前の帰省の時は1週間ずれて見ることが出来なかった・・・。


一人で見る花火はとても寂しくて、そのまますっと帰宅した。
私の目に見えている10倍花火の美しさは誰とも共有する事ができない。
誰かと一緒に見た最後の花火は横浜のみなとみらい。
今年はもう、誰とも見ない。