道行


食べたものや旅行にいった場所、楽しい毎日のこと
そういったことを日々更新している誰かのブログに
母親宛に送ったであろうメールが
日記の記事として表示されていた。


お母さん、請求の9千円は代わりに払って欲しい。
今月の給料は6万くらいしかなくて、旦那は生活費を1円も出してくれないの


そういった内容の日記だったと思う。
直前の日記に書かれている食べ物の話
友達と撮ったであろう室内の写真
プロフィール写真に載った笑顔
そして最新の記事


私は彼女のことは全く知らないし、彼女も私のことなど知るはずが無い。
これから知り合うことも絶対にないだろう。
半日後に見たらその日記は消されていた。
そんな風に苦労している女性や母親も世の中には沢山居て
ブログを誤爆してしまった、ただそれだけのありふれた話なんだけど
ほんの一瞬だけ見た彼女のその記事は、なぜかとても心に沁みていて
数時間たっても一日経っても、そのことを思い出している。


強風に舞い上がる白いビニール袋
耳にこびりついて離れない言葉
もうすぐ桜が咲きそうなこの季節は
いつも心が楽しくなってくるのに、今年はそうじゃない
低空飛行のまま、目線は地面ばかりを追い続けている
このもやもやはいつか晴れるかな。
ブログに載ってた笑顔の彼女、綺麗な青いワンピースを着ていた。
幸せになって欲しいな。
このブログを読んでくれている誰かも、幸せになって欲しいと願うよ。