awareness

昼間。叔母に電話。
祖母の痴呆が少しずつ悪化している。少しずつ少しずつ。
ばーちゃんは夜になってもなかなか眠らない、と叔母の声。
睡眠薬を飲ませても、遅くまでずっと居間に座って
娘や息子や家族が帰ってくるのを待っているらしい。
「今日はおつとめの終わるとの遅かねえ」と言いながら。
十数年前に結婚して家を出た叔父と亡くなった祖父と

すぐそばで話しかけている叔母が帰ってくるのを
彼女は待っている。


以前帰省した時にバレエを習い始めたと祖母に言ったら
「ゆりちゃんの踊ると見らんとね、発表会行かんばねぇ」
「えー、そがんレベルじゃなかばい、初心者やもん」
なんてやりとりをしたから
「今度発表会に出るとよー」ておばあちゃんに言おうって電話したけど
今日はデイケアに行っているのだと言う。
電話したら私だとわかってくれるだろうか。
この前帰った時は、5分5分くらいだったから
発表会の写真と中村屋のカレーを持って
真夏の長崎、竜馬の山、
おばあちゃん家に遊びに行こう。


長崎に帰る度に浦島太郎状態になる。
だから帰るのが怖い
私は数年くらいしか経っていないつもりで
長崎ではもう10年近く年が過ぎている。
この1年くらいは特にゆっくりと、しかしあっという間に
道行く人々は急ぎ足で歩いていく
私は一人、取り残された気になっているよ。