山道をピンヒールで


背中と左頬を挟む、親指と中指で挟む
この感覚を身につけられるようになったら
今度こそ私自身がステージの上に立てるかもしれない
それまではもっともっとへんなおどりを踊らなきゃ



ta氏と西武新宿、贅沢な時間でした。終了後は飲み。
それまでどこにもいなかった人に自分を説明するのは面白くて
引き出しの奥に仕舞っていた自分自身を取り出したら
カビが生えていました。



夫婦ってのは難しいよねって話すtaの煙が頭の中に入り込んでくる
多分、幼い頃から見ていた両親の姿に、何かイメージのようなものを描いていたのだろうと思う。
こうあるべき、○○とは、長女である娘の私とは。
思い出せないこともたくさんあるけど
父親の言葉と、握りしめる腕の強さと、どこかへ出ていくドアの音と
我慢しきれなくなって呟く母の言葉の一部は一部だろうけど1個1個しっかり記憶してる。
私が進みたい足の方向と選んだ靴が合っていないみたい
台所で泣き崩れた母親にティッシュの箱を差し出すと
LINEの既読で交わされる顔文字に怯える私になる
私が見ているのは私が作った演劇で
美しいストーリーと音楽と舞踏家の踊りに目を閉じていると
こんなひどい場所では演奏できないと酩酊した男がステージを降りて
なんてひどいステージだとシャツの裾をひっぱっていると
誰かが落とした消しかけの煙草で緞帳に火がついて
髪の長い弾き語りの女性が乱入して車の歌を歌いだし
メンテされていないギターはワンフレーズで音が狂って来月の請求になる
確かに大手町に行きたいのに行けないと私はメールを返信しながら
ハチャメチャになって燃え上がるステージを見て
招待していた両親のチケットはキャンセルしていたことを思い出し、少し安心して



ああ、あれはみんな舞台装置だったのかって
劇場で椅子にしがみついて泣いている子供に
「これはお話なんだよ」って一生懸命説明している
降りかかる出来事を重ねる度に
それは皆自分が引き起こしていたのだと
未来の私に気づいてほしいと書き残す今日の日記は
フジロックへ続く山道をピンヒールで








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