廃油冠水


ゴミ袋の内側のような新宿東口地上を通り抜けて歌舞伎町
アルタ隣雑居ビル地下、ふらんすに降りようとすると
階段を二三歩降りた辺りまで廃油で埋まっていた
ぐっと息を止めて潜水するように肉脂の深海へ沈んでゆく
幽霊船から引っ張ったtkさんの愚痴聞きフォークソング
ハンバーグを突くとチーズがたぷんと鉄板から溢れてくる
見渡せば首だけ獣になった人間達がタバコを吸っている
私はなぜこの廃油の中で泳いでいるのだろう



なんとなくなんだけど私、そのうち死んじゃう気がしてる
少し前から思っていたのだけど、女性の勘は当たるというし
だから神様は私に子供は授けなかったのだろう
ずっと沙羅姉と晃に早くそちらに行けるようにとお願いしていて
だいぶ頑張ったし、辛いことも楽しいことも色々あったし
ふっと気を抜けばフラッシュバックして頭は狂いだす
お前はいらない、と、海辺の人々は音楽を奏で出す
こんな悲しい出来事ばかり偽り悲しみばかりの世界
身体ごとグチャグチャに無くなりたい


お前は仲間じゃない
もう誰もいらないのだ
糠床に体を埋めて
私の心も体もいらない