敦煌の夢

どこか砂漠の真ん中を走り続ける汽車はいつまでも熱風の最中をくぐり抜けているから乗客はずっと暑さに涙を流し続ける猛暑のような車内で目を閉じていつ砂漠が終わるのかと晩の寒さにぶるぶると凍え眠りながら涙を流し続けるその夢はいつか住んで居た敦煌で飲んだ宴の夢、汽車の連結部では一組の男女が連結部を千切ろうとしてきゃっきゃきゃっきゃと賭けに走っている。この汽車はどこまで走るのかどこでもいいから止まるか砂漠が終わるか汽車ごとなくなるか脱線して死ぬかしてくれもう荷は何を積んできたのか誰に何を渡せばいいのかも覚えていない腐り始めた積荷の果実の異臭乗客の黄色ブドウ球菌ヘルペス飛んでバルトレックスは積んでいないからもろもろハーブと粉末でなんとかするよああ砂漠の砂が口の中に入ってじゃりじゃりそれでもこの目はまだ失明を逃れているから窓を少し開けて空の月を見ていた。