魚の葬列

終電間際の東京駅で
人の群れが一斉に駆け出していく
我先に 我先にと 
終電車は23:59
夢のワンハンドレットヒルズへ
死の臭いが立ち込めるこの路線は
コンクリートに狭まれた
さながら葬列のよう
最後の電車に寿司詰めにされて
何億個の圧縮された精子たちが子宮を目指す
放出されて死ぬことだけを考えながら
湾の向こうへ


湾の向こうで
無機質の街で命を失った車が眠り続ける
かつてぼくはあの車に乗ってあなたとどこまでも行くことができた
消えた女は姿を変えて いつまでもぼくを追いかけてくる
きゅって締め付けてきて気持いいコンクリートの壁が
剥がれ始めて 女は生理に突入する
ぼくは彼女の機嫌を損ねたのではないかとひやひやしながら
一つ一つ言葉を選びながら必死にメールを書いてる
終電車に乗って



終電間際の東京駅では
ぬめぬめとした人々が
我先に 我先に 
魚のように 水路を走り抜く

寿司詰めにされた精子たちは卵子には出会えない
死んだ顔をした女の機嫌を取りに葬列に並んでいる