新宿盗難口


粒子のように交錯する人々
研磨材のように傷つけあう
いつまでたっても磨かれはせず
かえって傷だらけになるばかり
女は喉の奥からげろっとナイフを吐き出し
子を切りつけることで躾する
武装した男は女の子を拉致して監禁し
売るものはないかと個人情報を覗き込む
人びとは傷薬を開発しては奪い合う
貧乏人から毟り取った羽は高く売れるんですよ
山帰りの中更年が剥ぎ取った席は労働者の汗が滲んでいて
駅員にクレームを言うと、電車の椅子は撤去されてしまった
遠く月の光が射し込む下水溝
網の隙間からフクイチが見えた