灯台


いつものように真夜中に目覚めて
起き上がったベッドの毛布は
うずくまる人の形をしていた
立ち尽くす私の腰元で眠る私の形をした人
私よりうまく生きていけるでしょう
時間の使い方も上手で仕事ができて
お友達もたくさん、家事も上手
気持ちもうまく伝えられるし
大切な人を傷つけたりしない
コピーロボットは彼に抱きつきながら
私に向かって舌を出している
ああ映画の合間のCMのように
ストーリーから追い出された
半券を失くして歩き回る
明け方の白い闇には音しかない
マンディアルグが描く新高円寺
唯一開いていた駅前の喫茶店に座り
読み始めたディック新刊の表紙には
彼と共に行った犬吠埼の灯台が描かれていた