Unspoken



どうしてこんなにこんがらがってしまったのだろう
紐は絡みすぎて片結びになって体中に巻き付いて
身動きが取れないビニール紐がきつく食い込む
こんなの自分じゃない、と悔やんで心が痛い
手のひらを探っていると見たこともないナイフが入っている
これでうまくこの紐を切れたらいいのに
どうしてこんなにこんがらがってしまったのだろう
人々はみな美しく、それぞれの素敵な世界を持っている
私は何か持っているだろうか
私は持っていないけれど
私が求めている風景やシーンや音や言葉を
いつか誰か理解してくれる人は現れるだろうか
湿った空気に響く音や人ごみにすれ違う悪意の火柱や
写真に撮ることはできない薄紫の陶器色の薔薇の美しさ
素敵な場所、ぶどうのおいしさ、新宿高野のケーキ、海の音
悲しさ、怒り、喜び、苦しみ、楽しみ、誰かの目で見る世界
明け方に流れ続けるジュークボックスのように
そんな私の大切なことについていつか誰かとお話ししたい
触れたい、触れてほしい、泣き崩れたい
どうせいつかは離れる
心なんて誰にもつたわらないもの