舌下漂流

誰に蹴られて血を流しても、治って
目には視神経が通っていてものを見ている
閉ざしたままでは上を見ることができない
美化されるどころか嫌な記憶だけが残り続け
逆流する苦しみは強い酸性で体から心を蝕んで
汚いLINEやシーンは焼きついて消えないことを
わかってと開くその漫画は閉じなさいと言う
理由が少しずつわかりかけているけど
今日も頁を開いてしまう
戦わなくてもいい方法が書かれたプログラム
蟻の巣に運び込まれるラクトアイスの欠片を
覗き込むその眼は見ていないようで
何を見て顔に触れるの
夜道を斜めに歩く時私のことを覚えているか
そんなことはどうでもいいものなのだろう
引き剥がされた白藻に足を絡めてしがみつく
舌下漂流
腕からこぼれ落ちた切花を握りしめて眠る