ここの ぼくたちのもとで

rottenlily2004-08-31

パウル・ツェラン
通過点としてのツェラン
いえいえ私はよく本を読まないものですから。あ、いえ、読みたいんですよ、けれども昔からなかなか働いてばかりでね、そんなくだらない事を理由に本を読まずにいましたよ。ですからねえ、あぁ、はい、まだ時間はありますからね。そう、ツェランとの出会いは衝撃的でしたよ。私は贅沢ですよ。それで一気に引き込まれましてね、読んでいるんですけどね。肌身離さずでして、下手な精神安定剤より効くんですよ。この前もツェランに助けられましたよ。今だって、正直読みながら涙が止まらないんですよ。理由は知りません。あまり私は頭がよくありませんので、むずかしいことはわからないんですよ。けれでもですねぇ、ああ。はい、そうです。初期詩篇でしてね、ええ、そういう歴史の後でしょう、中でしょう、読みましたよ。おや、おっと失礼、すいません、アイスコーヒー1杯頂けるかな。シロップもミルクもいらないからね。あなたはいいですか?ああ、はい。じゃあそれだけ、よろしく。すいませんね、しゃべりすぎたらのどが渇いてしまって。まあね、難しいことはよくわからないんですけどね、大の大人が夜中にツェラン読みながら涙流してるわけですよ。なぜでしょうね、私にも理由がわかりませんでね、ああ、はい、ありがとう。中でも1編好きなのがありましてね、え?どれかは内緒ですよ。お恥ずかしい。まあね、いずれにしてもツェラン読んでますよ。こんな詩を読む人間が、最近まで生きていたわけですから。身震いしますよ。ええ、ああ、その文学者は知らないなぁ。すまんね、あまり本を読まない人間でね、いえ、読みたいんですけどね。ああ、それで彼が言ってましたよ。通過点なのかね、ツェランは、ってね。相変わらず頭の悪い私はよくわからなかったですけどね、でも彼が読むツェランは本当に凄かったですよ。本当に震えましたよ。たぶんですね、普通の人はどうしてるのか知らないですけどね、私は別にこれでいいと思ってるんですよ。知識より理論より歴史よりすべてを飲み込んで言葉でしょう、ああ、はい、ラストオーダーね。何か飲まれますか?はい、私もいらないです。ありがとうね。まぁね、こんな感じで読んでますよ。ツェラン。ええ、彼はめったに読んでくれませんからね。魂でしたよ。正に。あの瞬間にあそこにいられてよかったですよ。でないときっとツェランとは出会えていなかったでしょうから。ええ、好きですよ。ツェラン。おや、もうこんな時間なんですね、そろそろ出ましょうか。花丘町のあたりにね、いいバーがあるんですよ。ウィスキー好きだと聞きましたけど飲まれませんか。ああ、私も好きなんですよ。ちょうどキープでアードベック入れてるんですよ。よかったらどうですか。いえいえ、気になさらずに。雨もひどくなってきたようだ、早いところタクシーで行きましょう。ええ、話の続きでもしましょうか。

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関東平野にも台風は来る
激しい風が私の部屋を揺らす
台風なんて、うきうきするものだった
もうそんな歳じゃない
激しく風は吹く
そしてこの土地では
この部屋からは
海がどんな様相かもわからない
こんなに大風が吹いているのに
うきうきなんかしない
台風は、人が呼ぶ
来て欲しい人のところにやってくる
来て欲しくない人のところにやってくる
台風は、人が惹きつける
台風は、人に惹き付けられるように
全てのものを飲み込んで
全てを風で吹き飛ばして
台風が通り過ぎる
大きな嵐がやってくる
関東平野にも嵐は来る
激しい風は私の心をも揺らす
関東平野にも台風は来る
全てを揺らして
全てを吹き飛ばして
全てを巻き込んで
全ての者を飲み込んで


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BGM GeorgeMichael Patience 数ヶ月ぶりに聞いたら涙でた
加川良 教訓

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