あの娘はもう土の中

久々の横浜飛行。
品川から横浜まで、京浜急行普通列車のノラリ旅。
崩れ行く廃墟のように色濃く残る地名に立ち止まり立ち止まり
飛び交う暴走特急列車を何本も見送る。
やっぱり京急が一番好き。
横浜は、故郷のように何時でも暖かく迎えてくれる。五年間も住んだ第二の故郷。
そんな横浜から福岡に帰ってしまう大親友と最後のランチ。
さよならの感じがしないから、また近いうちに会うんだろうな。


久々の中華街で大量のお茶と材料を仕入れ伊勢佐木町へ向かう途中、大きな神輿が大岡川沿いを行くのが見えた。
シャン、と空気が鳴り、人々はただ静かに神輿を見守っている。
荘厳に圧倒されるように立ち止まり、息を飲んで思いだした。
伊勢佐木町の神様はお三の宮、横浜の日枝神社。山王の神。
山王台に住んでいた頃から五年間、護ってくれていた神様だ。
ぼーっと静かにお茶しながら、秋祭りの町彩を眺めていた。


美味しいお酒、音楽、トリエンナーレとぐるり横浜の秋、新旧の友人たち。
東京神奈川の仲間達が集まっていて、沢山話して楽しかった。
大切な場所だからこそ、思い出は上書きされるのではなく、重なっていく。
町の片隅にコロコロと記憶が転がっている。
かつての人がこぼした言葉が、落ちた枯葉に絡み付いて大岡川を流れていく。
心が疲れたら、横浜の海に帰ろう。


今朝の空は、いつか見た犬吠埼の暁と良く似ていた。
日に日に早朝の空が澄んでいくのがわかる。
出遅れた蝉の面倒を見ながら、夏はフライトの準備を始めている。
二基の台風に乗って、秋がやってくる。