rejected stone by the builders


土曜日、佐々木昭一郎夢の島少女』を観る。
涙が溢れ、言葉を失った。
触れてしまった、知ってしまった
知らなかった方が、楽に生きられたかもしれない。
でもなぜか、漠然とだけれど
いつか対面する日が来るのはわかっていたから
やっとその日が来た、それだけなのかもしれないと思った。
そのために今日があるのだとすれば、明日は?
目を背けて彼女が見つめた光の先には?
濁った海を聞きながら、ずっと映像のことを考えていた。


日曜日、暗闇の原美術館で奥秀太郎氏の『白夜』を見る。
空はピンク色、風に震えながら虫が飛んでいる。
早く着き過ぎたのが良かったのか。
1列目の椅子、超特等席で観覧させて頂いた。
大好きな奥秀太郎さんはもちろんのこと
黒田育世さんの舞踏も素晴らしかった。
今日のは、プロジェクション・マッピングというらしい。
美術館は蒲田のパン工場になり、教会になり、
押し寄せる津波になり、鐘が鳴り響く。
モノクロ映像の花びらに思い出すのは
蝶のように軽やかに飛び跳ねる彼女のこと
彼はきっと、地震を体験しなかったから
流れてこないことを知っているから
墓を抱きしめて涙を流し続けるんだろうな
日本人は、墓でお酒を飲むのが好きだから
5万6千個のパンが日本中に流れていく。
何事もなかったかのように、今日を生きている。
一度潜った波間にずぶ濡れになったまま海を演出するような。
心の鋭さを保ったまま、抉さやしなやかさがそのままに響く。
目を背けてはいけない自分自身に対面させられる。
何回観てもやっぱり奥秀太郎さんの演出が好き。
観ることが出来て本当に良かった。素晴らしかった。


音と匂いが重なって幾層に折り重なる
思い出と見知らぬ先の光を見ている
心の琴線に触れる大切な週末だった。
捨てられ転げた石、うまく飛び出して
音になって響けばいいな。