目のさめた幻覚

「いつからきみは、幻覚を見るのに幻覚剤が必要になったんだい?」
ドン・デニーがフランセスカ・スパニッシュにきいた。
「きみの一生は目のさめた幻覚の連続じゃないか」


「ユービック」より
フィリップ・K・ディック
浅倉久志




こんなに塞ぎ込んで苦しくて一人になりたい夜に、
見に行かなければならないのは落語。
さすがに今回は行かなければまずい。
それにしても随分な遅刻だけれども。



嫌なこと、逃げ出したいこと、悲しいことや苦しみを
出来るだけ考えないように、と言われてやってみているけど
我慢し過ぎた心が苦しさに悲鳴をあげているみたい。
忘れても消えることはないし、
なかったことにするのは不可能。
いつかどこかに置いてきたそれは
もう取り戻すことは出来ないんだろうな。


夜と朝の隙間に錆びた胸は息するごとに軋む


晃は何故、こんな苦しい世界に
私を置いていってしまったんだろう。
それでもまだ生きていかなきゃいけないの?