みどり笹見垂れ


病床では様々な夢を見た。


今はもう取り壊された旧実家のリビングで、家族の皆でブドウを食べる夢。
教育テレビ見てて、靴の作り方の映像が流れていた。みんなリラックスしていて、妹たちはまだ小さくて、これは一番はっきりと覚えてる夢。




高層ビルやランドマークを伝い、空を飛んで遊んでいる。
四方を海に囲まれた小学校の屋上から景色を眺めていると、
錆鼠色の海のずっと向こうから、鯨の大群が次々と泳いで来るのが見える。
例えるなら#47585cの色に、大小様々な鯨が巨大な群れとなり、向方から彼方へ泳いでいく。
鯨の後ろを引き連れるように、白い発泡スチロールや木箱の山が流れている。
それらは全て鯨の加工品であり、鯨の赤身や歯の工芸品は長崎の専門店で見ていたそのままの形で流れている。
鯨は綺麗だな、鯨のベーコンが食べたいなあ、なんてことを考えながら、
波を泳ぐ巨大な鯨の目と発泡スチロールの山を見つめている。


色々なことが落ち着いたら今度こそ長崎へ帰ろう。
故郷の海へ、ご先祖様の海へ。
世の中はとても騒がしくて、胸が痛むことか多すぎて。
それでも静かに、心穏やかにいられたらいいなって思う。


作られた森にも鳥は集まってくる。
最後の色をしたイロハモミジが魚のように腐っていく。
歌舞伎町で泣いている女の子は透き通った目をしている。
雨の空は、とても綺麗な白でにじんでいる。