四ツ谷のフォルダ

一泊二日の長崎帰省、初日。
施設に入所した母方の祖母に会いに。


だいぶ反応が無くなっていた。
深く眠っていたところを起こしたから、余計にボーッとしていたようだ。
それでも、空が曇ってきたね、と話しかければすぐ窓の外を見ていたし、単純な質問には答えていた。
もう新宿中村屋のカレーを見せても東京の話はしてくれなくなった。
彼女が見た戦前の四ツ谷の風景、新宿
どこかに住んでいる都内の親戚の話
Diorの話、和菓子屋さんの話、おじいちゃんの話
もうあの話は聞けないのかなあ。
三度嬉しかったこと。
私の名を聞いて、長く考えて、懐かしい名前だと呟き感慨深い顔をしたこと。
ほぼ閉じてた目をすっと見開いて、ゆりちゃんと言ってくれたこと
結婚の話をしたら、それはとてもめでたいねと言ってくれたこと。
目がじわじわした。
部屋で過ごす祖母との1分1分はとても長くゆっくりとした時間で
普段の仕事中の1分と同じ単位だとはとても思えない。
また会いに帰ろう。
ふと思い出してくれるようにまた中村屋持って行こう。


実家に帰り、指輪を反対側の指につけ直す。
もう一人の祖母は、幼稚園だった私の話をしてくれた。
祖父がきびなごをさばいていると、まな板の下からふっと小さな手が出てきて、きびなごを一匹取って食べていったらしい。
私がきびなごをつまみ食いする様子( ゚д゚)


夜中には恩師のbarへ。
もう、14年前かあ。
このコミュニティには今の時間が流れていて、私はもうそれには属していないのだ。
ムラからは外れてしまった


22年分の自分の記憶がそこら中に織り重なっている。
長崎の街を一人で歩いて見ているのは
自分の手の平から発するプロジェクトマッピング
目のフレームに映されるARのような映像
眼はプロジェクターになり
沢山の日付フォルダが空を泳いでいる
でもそれは
googleドライブでもdropboxでもなく
USBメモリの中を泳いでいるような気分