サイレン

けたたましく鳴るサイレンに
あなたはいつも困った顔をして
なんともないよと手を差し出して
途中で折れた煙突の続きを指で差す
いつものネギの花を千切って振り回して
馬鹿みたいに鼻を鳴らして笑う声は
もうここにはない
待てども待てども帰らない
あなたはどこにいるのでしょうか
誰かの歌を歌っていますか
わたしにはできなかった
優しく愛せる人を撫でていますか
大好きな雨の日には失くした傘を
もう二度と帰らない、と
眼を見開いて言ったあなたの
背中を見送ったまま立ち尽くしている