痛み

 

 

 

 


血管のように痛みの管があると思う。痛みを運ぶ、目に見えない管。喉の痛みも心の痛みもあらゆる痛みを運んでいる。/その痛みは鎮痛剤が効かないタイプの痛みだ。いつまで経っても薬が効かない頭痛。指先に感じるピリッとした痛み。ふいに感じる心の痛み。全身に痛みを運んでいる。/痛みはどこから来てどこへ消えるのか。外から衝撃があったとしても、痛み自体は自分の中から生まれるものだろう。息のように排出しないなら、痛みは自分の中を駆け巡っている。/痛みと言っても、感じる痛みも感じられない痛みもある。感じられない痛みは私が感じていないだけで、体はしっかりと痛みを感じている。臓器は嫌がるように隣の臓器に押しつけて行く。運ばれた痛みはやがて脳を通じて行動になって、他者に伝わっていく。/痛みの管はどこかで他者に繋がっている。私の心が感じない痛みも、他者の心には激痛かもしれない。辛さを主張する子の痛みが親に伝わる時もある。私だけが感じている心の痛みの向こうで憎い相手は頭痛に歯を食いしばっているかもしれない。/だからもし、痛みに苦しい時は、この痛みが相手にも伝わると考えること。自分だけが痛いのだと思わないこと。相手の痛みを取り除くこともできることを知ること。体中に伝わり行く痛みは絶対に自分にしか知ることができず、自分の中で痛みは駆け巡り、痛みで管が埋め尽くされ、痛みと世界が同化した時、死ぬのかもしれない。