それ隠れたるものの顕れなく

片目の潰れた猫が、腐った瞼を口に咥えて
不幸せそうな顔をして通り過ぎてく
求めても、与えても、それでも足りぬ
積み上げても バラバラにしても

「それ隠れたるものの顕れなく、
秘めたるものの知らぬはなく、明らかにならぬはなし」
(Evangelium Secundum Lucam)


縁が切れるなんて、そんなものはじめから存在しなくて
元から縁がなかった、それだけの話よ
紫のシャツのその人は、笑いながら日常をプレゼンしてく
言葉にしながら自分を造ってく。
磨いても、伸ばしても
近づいても、笑っても
メロディのない貝はただの貝
積み上げられた山が立ちふさがる
タワレコで聞いたような音が
私の耳を締め付ける
歌わない蝶はただの蝶
捕まえても愛撫してもただ鳴くだけで歌いもしない
底なし沼で脱水症状を訴えた
猫が走り回って、飛魚のキラキラを見つけたと
うろこを咥えて戻ってみれば、
知らないシャム猫がうにゃうにゃしてて
いつのまにか、うろこはひび割れて変形してた
飛魚が水を得てキラキラ戯れる姿を
捕まえて、あなたに見せたかった
シャム猫が尻尾振って歌う、姿には到底かなわない
主のない猫が 乾いたうろこを咥えて走ってく