morgenspaziergang

通勤中に読んでる本に熱中し過ぎて、会社に行くのをやめて喫茶店に入って続きを読み始めた。仕事したくない。評価とか依頼とかサイトとか店の話とかもうどうでもよくて、このまま本を読み続けようと思った。
現実と空想の境目が曖昧になると、見ている世界が変化を始める。地面が割れ、音を立てて崩れはじめる。空からゼラニウムの束が次々に落ちてくる。BEAMSの裏の産婦人科で卵が割れる。安い喫茶店の椅子にカフェオレがこぼれて、ねっとりした無脂肪乳が糸を引く。好きなギタリストが脳内で音を奏でると、豚骨からにじみ出た脂がキラキラオーロラ色に光りはじめる。神保町でなくした傘を広げたあなたが楽しそうに笑う。ワックスで広がる黒いあなたの髪に触れる。抱きしめたのは大学の時の男の子で、その世界には過去も現在もなく、ただ私の脳内だけで全ての小説が完結する。

昨日、帰り道に色々困り果て、親友のルリさまに相談したら、どうやら彼女も困っているらしかった。もう少し、あと少しなのに掴めない。尻尾を掴めば、それは多分全て私のものになる。空気が意味として空間になる。あと少し、あと少しなんだ。


あなたが飲み残した世界中のワインを降り散らして昨夜の雪が染まりだす。新宿三丁目の裏通りを疾走する男の子の手には折られた筆が握りしめられている。開いた毛の先から思いがキラキラそこらに散らばる。コンクリートの葬列列車に乗って、都内の塾へ一人通ってる私の目に映るのは湾岸の大きな倉庫。コンクリートの壁にはびっしりと虫がへばりついていて、思わず目を閉じた私はトイレに駆け込んでエビリファイの錠を口に押し込もうとする。昨日の雪に湿った金属の隙間から湿気た白い粒が粉になって手の内で弾ける。急いで全部飲み込んで、給湯室のウォーターサーバーに水を拾う。こぼれた無脂肪乳を拭き取って、鏡の自分の垂れた瞼を付け替えて、扉を開けた先にはあなたが部屋の設備と格闘してる。西新宿の夜景の中であなたの服は消毒薬の匂いがする。その指にうまく丸めこまれる。昨日のセックスでお腹が痛む。声が聞こえたらそれは就業時間を告げるブザーだった。


そろそろ仕事行かないとまた帰りが遅くなる。もう少し自分の中に居て、ぼやけた霧が明けたら、仕事に行くよ