視たる心の波

ガラケーを握り締めたまま返事がくるのを待っていたら
返って来た言葉は、電話に出られないって一言で
邪魔しちゃったなぁって、きゅぅーっと何かが沁みていった。
女は「妻タイプ」と「愛人タイプ」の2つに分かれるんだって
両性愛の友達が言ってたのを思い出した。
私は確実に後者に分類されるんだろうな。
ぽいって捨てられた時、なぜかどこか、少しほっとしてしまう。
いやいやそもそも愛情なんかどこにもなかったんだって
twitterにもfacebookにもmixiにも携帯にも
だってどこにも証拠がないんだもの。
写真一つ無い真っ白なスケッチブックと
送受信した瞬間に消えるように設定
されているアプリのアイコンを見つめて
そんな恋愛ばかりしてきた気がするなって目を伏せる。
いつも、本妻の元に帰る背中は絶対に見ないようにしてる。
あまりに弱弱しく、あまりに哀れで、
絶対見せない皺が浮かび上がってるから。
ねえ、これみんな自分の思い込みだったら、
今、目の前にある嫌なことが全部思い過ごしなら
今朝触れた手の平も、一昨日夢でみた腕も
初めからみんなお話だったんだと、
夢見がちな妄想話だったんだなと、
ぎゅうって目を閉じることができるのに。


涙の雨は足元の海、視たる心の波にさらわれる。