闇に溺れる

闇は闇の中にあって、人は闇に気が付かない。闇に溺れる事が闇を知る事じゃない。そん
な事を思っていた。ライトを浴びながら、何にも見えない闇に向かって演技する。感覚の
中に自分を置く、とても冷静に。劇団時代に稽古していた事、某氏に学んだ事、今になっ
て思い出している。考える事、学ぶ事を避けてきたツケが今回って来ているよう。でもそ
れらはきっと今からでも遅くないはず。人混みが怖いから、下向いて歩く。それでも家に
は辿り着く。闇に溶けた自分の心を、闇ごと掴んで胸に戻す。うんうん唸って捻だす。今
までだってそうしてきたじゃない。怖いのは他人じゃなくて闇に溶けてしまった私自身の
心。私は怖くない。黙ったままの心を撫でて、言葉を私は恐れないでいたい。さらけだす
よ、そうして生きてきたから。