エレクトリックサーキット

ぐるぐる回るエレクトリックサーキットで不在が風の音になる 声は電子音に分解され 覗きこんだ顔文字に変換され 15両編成風にズタボロにされ 確かに触れた体温は石灰の熱になり 笑顔はjpgのワンドットになり 抱き締めた圧力は押し込まれた埼京線になり 偉大なる音楽家の話はwikipediaになり 歌声はMp3になり 返る言葉も人工頭脳であるのかないのか 電気信号になったあなたの不在が 最早映画か小説ではなかったかと説得させる もう随分と会わないうちに いつか会ったあなたは サクラか人工頭脳か妄想かもしれないという思いにかられる 昨日読んだ本の男は別れた女に未練があって 今頃本当のあなたは二人でスパゲッティを食べているかもしれない 思い出すあなたの顔にはディザが混じって砂嵐になる 思い出すあなたの声はノイズになってよく聞き取れなくなる 思い出すあなたの触感でさえ電気信号に変換されて あなたと交わしていた約束でさえ小説の一文だったかもしれない 会いたいのに会えない不在に世界が0と1に変換される