’ll be more than another.


二月末に課された課題図書をちょっとずつ読み進めてる。
もう八月なのでいい加減返却しないといけないのだけれど。
この前まで読んでた『水源』の次に私が手に取った課題図書は『武満徹』。
とても美しい文章で、すうっと心に馴染んでくる。馴染む、という言葉がとてもよく合う。
武満徹父親が好きだったはず・・・。


そういえばあの頃、仕事場から漏れる音を拾って潜り込み、父親の版木の手を止めては同じ部屋で宿題をしていたことを思い出す。
段々と忙しくなり、暇を見つけては家を飛び出すようになった私は、部活も遊びも恋愛も勉強も全部忙しくて、いつしかそのまま長い長い反抗期に突入していく。
父親からもう少し色々なことを学べばよかったと後悔する事もあるけど、何も言わなくても、あの人の精神は私の心に深く深く根付いてる。



24歳で止まった目覚まし時計の電池を探している。
少しずつ少しずつなくした何かを取り戻している。
そっと苦笑いしてくれればいいと思う。やっとここまでこれたのだから。



京急品川駅の救護室で目を覚ます朝、ぶっ潰れたダウニーのボトルを洗う朝、売上げに悩む朝、FAQの文章に悩む朝、武満徹を読みながら二度寝する朝、全部同じ八月の朝の輝き。思い悩みながら過ごしてきた朝のこと。人々の金曜の夜が音楽になる。わからずに呻きながら苦しんでた答えを今年はいくつも見つけることが出来ている。相変らずダメダメだけど、それでも今の私はとても落ち着いて、出来事を体ごと受け止めることができている。血液をリンパ液を体液を伝って全身を駆け巡る、何かが確かに息づいている。私が私であることの意味、生きていく楽しさ、ざらついた水の煌き、今日の目線の向こうにあるもの。


もっともっと変わっていこう。楽しく生きていこう。どんなに苦しくても、明日を恐れないように。電池は多分、そのうち見つかる。