灰の土曜日

地震に対しては然程気落ちする事がなかったのに
原発関連のニュースが出始め、急に精神的に不安になってくる。
一人で部屋に居たが堪らなくなり、買い物をしに外に出る。
しかし。


水や食料品は有り余っており、
人々は普通の昼食の材料等を買っている。
カップルは笑いながら高円寺に向かって歩き、
おばあさんが談笑している。
店という店は通常営業している。
ショウルームでは子連れの家族が車の契約のようなものをしている。
携帯からあふれ出す情報、爆発しそうな原発、余震、
明らかになる出来事はみんな嘘なのかと思うくらい、
人々は普段と変わらない様子で生活している。


こみ上げる不安感と目の前の日常感が一致せず、益々気持ちが悪くなり堪らずkyのところへ。
kyは眼科に行っており、待合室の椅子でニュースを追いながら彼を待った。
笑顔で耳をすますkyに話しながら気付いた、言いようの無い不安感の原因は
幼少期から繰り返し聞かされた核の恐怖、長崎の平和教育。焼き付けられた原爆のイメージ。
それに気付いた瞬間、呆気無く不安は消えた。