女の日常は鼠の顔で蕃殖する 

循環しない空気、酸素の足りない部屋。首を締められるように頭痛、いつもならなんてことはない新宿駅の人混みに放り出されそうになる。自分が何をしようとしていたのか思い出せなくなってる。築き上げたものも何もかも、全部壊れてしまえばいいって思ってる。簡単なこと、ボタンを一押し。


わかってる、わかってるよ。けど、高速で回り続ける歯車に、外れた部品を戻すのは難しいでしょ?


早退するように会社を抜け出し、後輩のお悩み相談を御茶ノ水で。私の方が悩みを聞いて欲しいって思ったけど、しかし、自分が何に悩んでいるのかも思い出せなくなってしまったので、とりあえず彼の話を聞いていた。イエウサギみたいな顔をした男の子を、言葉でいっぱい苛めた。「僕は一人で色んな事考えなきゃいけないんだと思います」そう言って秋葉原の光の中に消えていく彼の傘をじっと見つめ、帰って寝た。



title verse cited 北川透「他人の街」