Chromakey Dreamcoat


夢の中で、音を聞いていた。
意識の半分は目覚めていて、これが夢であることはわかっていた。
確かに音が聞こえるけれども、これは私の脳が再生している音の記憶。
音が聞こえるのではなく、音という感覚そのものを感じている気がした。
だから、メロディなようでメロディでない。和音は狂い、中間部の音が聞き取り辛い。
音楽のルールを知らない私の脳は、曖昧に誤魔化しながら音を流す。
聞こえているようで聞こえているのではない。夢の中の音。
視界の真ん中に切れ目があり、見慣れた本棚の一部が見える。
眠れなかった時間切れの朝と、見たくもない現実が領域を広げ始める。
生きるのは辛いし、逃げ出すエネルギーもなくて
見なかったことにしたいのに
舞台を見た後、街にかき消されるものと同じように
誰かと離れた後、傍にあった感触が消えていくように
音は濁音が混じり、お隣の工事音が混じり、寝息が混じり
音は最後に真っ黒な人影になって
リズムに乗って体を翻し
岩崖の上から海に飛び込んで
白い泡に紛れ混んで見えなくなった。


不思議な夢だった。