鉤を手に

鉤を手に


8@aks@29


数ヶ月前から予告されていた29イベントの日
ttさんにしては珍しく、当日早めのヘルプ要請で
昼寝して出かけた8は夏祭りの日のように騒然としていた
3人の要人たちは予定より15分早く現れて
それでも完璧に仕上げてしまうttさんは流石だった
ぼんやりとした闇の中で絵を描くように探っていく
探っているようで想像した絵を描いている
それはとても信頼出来る仕草で出来上がりの絵は鮮やか
何一つ相容れないようなビニール袋数枚の向こうへ
ttさんはなぜか私にバトンの山を手渡してくる
どうしてなのかわからないけれど
どうして私は今ここにいるのだろう
「それは数ヶ月前にあなたが選んだことですよ」と
スピニングリールの隙間に流れる葉巻の煙のような
足で踏む150円のA3牛肉100%ハンバーグのような
どうすれば他者を喜ばせることができるのか
私がずーっと思い描いていたような、数色が降り混ざる風
いつか目指していた彼の絵のように痛みがある
真っ暗な部屋で時々差し込まれる光を眩しそうに見て
現れる具象を見つめては横に追いやり適切な言葉をかける
穴だらけになったのなら埋めちゃえばいいんじゃないの、と
鉤を手に粉になったコルクを目に埋めて蓋をするから
明るいこの世界を何も見なくてもいい
見えないものだけを見ていればいいと彼は言う