曇空に海猫が沈む


レッドブルに授けられた翼を携え、
海風に乗って過ごす稲毛の週末。
私が行く時はいつも、この土地は曇空。
千葉は全てが広い。家も道路も公園も。
長崎、横浜と坂道の街で育ったせいか、
こうも平たい土地が続くと不安になるくらい。
似た街大宮と違うのは、海の音があること。


腐臭漂う波を見つめながら
長崎の海に帰りたいと思った
海に飛び込んで魚になれば
いつか長崎に帰れるだろうか
潮が逆だから駄目かな。
海猫が降りて、波にプカプカしていた。


電話口に笑う母親の声を聞きながら
苦しくて悲しくて
もう少し力があればと
無力で弱い自分に嫌でも対面してしまう
缶コーヒー片手に海浜ニャー子を見て、
引越話を先に進めて
ヘドロのようなストレスを洗い流して帰宅。
色々なものを削り剥がしたら
気の抜けた庭鳥みたいになってしまった。
曇り空に沈む猫を拾って
聞こえた声の先に、彼岸花
二人が大好きだった花
彼らは私を置いていったのではなく
いつまでもそこに居てくれるんだって
もうすぐ沙羅姉の命日
あの日の歳に追い付いてしまうね
赤い薔薇の花を買って
とても幸せに生きてるって
笑顔で会いにいくよ