パイ生地のように

背を向けた方向へ人は去っていき
足の向いた方向から人はやってくる
夜中何度も何度も目覚めては悪夢を見ていた
人の出会いは偶然ではないようで
とんとん、と肩を叩かれたその人は
名前は知らないけど顔は知っている人で
朝、足を踏み入れた街の業界人だった


何も抗う必要はないけれども
できることはすべてやっておきたい
後悔のないように
この手から舞い上がる羽毛布団の
羽根の隙間をぬって丁寧に重ねる
手の先にパイ生地のように
フィナンシェを乗せていく