あなたはここにある

 

 

 

気がつけば過去を向いているのは、曲がった背骨の癖のようなもの。向かなくたって生きていけるのだけれども。それでも少しずつ世界は変わっている。私が居ると思っているこの外の世界は本当は私の内側にあって、いつまで経ってもyoutubeとpornhubとカメラロールから抜け出せないのは私自身だ。それでももうここに鬱々とした私は居ない。雨の嫌いな、資料作りと英語が苦手な、顔を上げられない私自身。いくらでもどこへでも行けるし、見ようと思えばスペインの街中で笑う彼の顔だって見られるのだ。もし出来るなら真っ白なシーツの向こうにある眼に触れよう。ビールを二本準備しておこう。飛ぶ方法をもう少し探しておこう。新しい楽器を、歌詞を、スパイスを、炭水化物を、様々な名刺をストックしておく。嫌いな人にはもう会わないでよい。ここには逃げ場があることを見過ごした足元の扉の合鍵を沢山作ってそこら中に振り撒いておこう。そうすればいつか私が拾う、何年かかってもいい。あなたはここにある。