らしくない

私はらしくない、ことを毎日のように主張する人がいて、人の振り見てなんとかと言うか、自分も反省ではあるんだけど、それはきっとそれそのものが彼女のステキなアイデンティティになっているのだろうと思った。甘いもの、可愛らしいもの、お洒落なもの…彼女が思うところの「そういうのが好きな大多数の女」があって、そして彼女は「そういうのが好きでない女」であることが自分自身である。そんな人達は珍しくないのだけれど、それでも自分はそれが自分だとことあるごとに主張する。そんなに嫌だ嫌だと言いまくらなくてもいいじゃない?と思う。私の趣味ではなくてもいいところはたくさんあるし、自分が嫌なら他人に勝手にさせておけばいいのに。そんな彼女は自分の趣味ではないものを作り、お金を作る。それは彼女の勝手だ。彼女の食べ物はとてもおしゃれな見た目だけど美味しくなかった。しつこいほどに甘かった。それはそれでやり方。

 

そういえば昔にもそんな人がいて、なにかと否定してくるから嫌だった。自分の主義主張に合わないものは否定して、それでないことが自分自身である人々。大多数や世間、与党が悪であり、私は正義。そんな人の矛盾を指摘するとなぜか怒る。そしてびっくりするくらいTVやネットを信じてる。

 

 

そんなの、今の私にはどうでもいいと思う。多分、ほんの少し前の私には無かったものである気がする。世界はSF映画のように歪んでいく。アニメよりもアニメらしく進行する。問いかけるとマグカップが話し出す。新宿では時計を持ったウサギがサブナードを全速力で駆け抜ける。自分を半透明にすること、目を閉じて世界を見ること。津波のように過去が流れ去り、今の私には何一つ残っていない。それでもきっと何かは残っているのだろう。物事は少し昔とは違ってみえる。大して変わっていないのに。不思議だ。それでも私はまだまだ見えてないことがたくさんある。見えないけれどそこにあることはわかっている。あとはそれをどう見るか。ただひたすら静かな空間、鳥の声が聞こえ、緑から流れてくる鮮やかな風がある。アルコールに頭を漬けると午後は身体が重くなる。深く踏めば長くジャンプできる。誰かを思って書いた詩は、別れの歌のようだと感想が来た。言葉に現実が付いていくのならば、痛む心に気付かないように、どうか心安らかに居られますように。傷を隠して塗ったマットなネイルが早く乾きますように。心から人を信じることができて、笑顔で楽しめる日が来ますように。もう誰にも裏切りがないように。私は今日の私らしくない新しい明日を過ごすことができますように。