希望

一つの僅かな希望があるのならば私はそれに祈りたい。私に足りないものがあるのならば満たしたい。弱い自分だから強い女になりたいし、ずっと変わらぬ自分ならば、この青さを維持したい。大人になるのは難しい。だから私はなりたい大人になりたい。

帰り道、新宿の明かりが遠く光る。私に足りないものは?私が輝くためには?私は一人で探しにきた、私は私のまま大きくなりたい。

その昔好きだった男とドライブに行った時、少し冷たい風と緑の中、子供の話をしていた時、「日本中に俺の子どもがいるな」と彼はぽつりと言った。それ以外に彼は子どもの話などしなかった。職人になったりシェフになったり、大阪にいたり東京にいたり長崎にいたり離島にいたり、彼はいつも一人、セブンスターの彼は、自由に生きていたけれど、本当はどうだったんだろうって思った。今日気付いた。彼は、自由だったのだろうか。私がなりたい大人の一人。笑顔を教えてくれた。自由に生きることを教えてくれた。彼は今どこにいるんだろう。もうそんなことも気にならないけど、きっと今も彼はピアノを弾きたがってる。私に無限の可能性を教えてくれた人。ギターとカメラと重なり合ったCDと、それはみんな私の記憶の中、強く生きろと彼は言う。思い切り片思いだったけど、あんな大人になりたいんだ。下の階のスナックの光が差し込む、真っ暗な部屋に、蛍が光る。私はまだ、ギターを手に出来ない・・・