近況

鏡に映った私の顔は、病気の後のように死にそうな顔をしていた。とても健康的な23歳じゃない。

ここ数週間不安定が度を越したのか、朝の電車の中で爆発しそうになり電車を飛び出しかねないところだった。恵比寿駅で流れていく人の波を見ながら私もついていこうかと思った。しかしもう、都内には私の家は無い。実家にも帰れない。おうちに舞い戻るわけにもいかない。職場の人たちはみんな優しいので、職場に着くと少しは気分も落ち着くんだけど、やっぱり満員電車が痛い。頭が混乱して宙に浮いた感じになり、脳みその中に空気があって思考が煙の向こう側にあるような感じになり、自分自身が何なのか全く訳がわからなくなってしまう。ついには彼氏様にまで迷惑をかける状態に陥ってしまったため、土曜日なんとか新しい病院に行った。そこでは秒速で診察が進められ、医者は私の言う事を聞いてなかった。私の話を聞くことなく、一方的に私のことを「ちょっと敏感なだけよ」と決め付けてかかった。私は大学の時カウンセリングで感じていたあの失望と吐き気を感じ始めていた。食堂の外で昔の彼氏に電話である「告白」した時の眩暈に似ていた。もらった薬はあんまり効いてない。次に病院に行けるのは週末、2週間後。遠い。給料日も遠い。大宮時代にもらってた薬を取っておけばよかったと思った。何種類もの薬をくれたあの大宮の先生こそが正しかったのかもしれない。私は少しずつ駄目になってきている気がする。しかし今、この仕事をやめるわけにはいかないのだ。私は生活していかなければならない。ただでさえお金が無い。今仕事を辞めたらもう何も残ってない。あの日給生活が待ってるだけ。8月の悪夢が頭をよぎる。大学時代の狂った自分が目の前に立ってる。真っ赤な服を着て、長いスカートを引きずった自分が。もう帰る家もないのだ。私は目をつぶって仕事に行かなければならない。手の平の音楽だけが私の支えになってる。一人でも生きていかなければならないのだ。新宿駅のトイレで涙と鼻水が出た。もう何も残らなくなるまで吐いた。そんで何事もなかった顔をして、目を伏せて私は丸の内線に乗った。

こんな日記は気に入らないと人は言う。もう少し口を噤んだら?と。しかしどうしようもない。こんなくだらないことを考えてくだらない日々をすごしている。これが今の私自身。これが現在の自分。これがリアルな自分だ。どこをどう掘り返しても、面白い自分なんか出てきやしない。私を削いでも何も出てこない。そこには人間の腐ったのがあるだけかもしれない。昨日食べたマンゴスチンのそのうち1個は腐ってて、真っ白な果肉の隙間に蛍光緑の不気味な物体が顔を覗かせていた。私はそのままゴミ箱に捨てた。私は仕事をやめるわけにはいかない。私はこの場所に立っていなくちゃいけない。私からは何も生まれない。私は言葉使いなんかじゃない。軋む体を抑えている。痛む胃と吐き気を抑えている。どうしてこんなになってしまった?どうして何も書けなくなった?どうして世界が黄色く見えるようになった?どうして顔が見れなくなった?


どうしてこんなくだらない人間に落ちてしまった?


大丈夫という言葉も、もうどこかに落としてしまったよう。